interview

あなたはコロコロ派? ボンボン派?

―『激伝』復活のキーパーソンである秋田書店の高橋さんとバンダイの三原さんは、年齢的にも直撃世代だと思いますが、お二方にとって『激伝』とは?

高橋:当時、毎月楽しみにしてましたねぇ。そういう気持ちになった、初めての作品だった気がします。「コロコロコミック」も読んでましたけど、どちらかというと、「コミックボンボン」派でしたよ。『激伝』があったからです。あと、『ウル忍(ウルトラ忍法帖)』とか(笑)。三原さんは?

三原:もちろん、毎月読んでました。僕はグレートが好きでしたね。ゴーデスに乗っ取られたときはビックリしたけど、すごく美味しいポジションで。あと、高橋さんのボンボン派っていう話、僕もすごいわかります。当時、「コロコロ」はホビー誌で、「ボンボン」は漫画雑誌みたいな住み分けがなされていた気がする。

瑳川:「コロコロ」のほうがホビーに忠実っていうか、真っ正直にホビーの魅力を伝えるために作ってましたね。「ボンボン」に載ってた漫画は、仮にホビーを元にしていても、それを作家さんが自分なりに料理した作品のほうが多かったから。たとえば、『ロックマンX』って、明らかにそういうゲームじゃないよねっていう(一同笑)。

―岩本佳浩さんの、やたらと喜怒哀楽の激しいロックマン! そういう意味では、かつて秋田書店から発刊されていた漫画雑誌「冒険王」に近いものがあるかもしれませんね。作家性の強いコミカライズ作品がいっぱい載っていて。

瑳川:まさにそうだったと思います。僕らの世代でいうところの石川賢先生の『ゲッターロボG』、桜多吾作先生の『グレートマジンガー』みたいな個性派揃いというか(笑)。「コロコロ」の場合、もっとホビーに合わせたキャラクター作りをしていたから、大元のオモチャが似通っていると、どこか漫画の内容も似てきてしまうという側面もあったけど、ホビーの魅力を伝えるための方法論として、ひとつの正解を導き出していた気がします。元ネタのある漫画の作り方としては、「コロコロ」のほうがニューウェーブだったんですよ。

復活! 新主人公はメビウス!

―今回、どういった経緯で復活に至ったんでしょうか?

高橋:もう7年越し? 8年越し? 『激伝』復活は、僕にとって宿願だったんです。秋田書店に入社して1年目、いきなり「ボンボン」編集部に電話をかけまして、「瑳川竜先生の連絡先を教えてください!」と(笑)。僕、知らなかったんですよ。瑳川先生の正体が、『ダイの大冒険』の三条陸先生だったということを。

瑳川:まぁ、当時は公にはしてなかったですからね(笑)。

高橋:あっちは「まぁ、ご存知だとは思いますけど……」っていうノリだったので、こっちも「ええ、もちろん知ってましたよ?」みたいな反応をしつつ(笑)、早速ご連絡させていただいたわけです。当時、バンダイのカード事業部さんで『大怪獣バトル』をやっていたので、そこに絡めて新しいことができればという話だったんですね。もちろん、あわよくば『激伝』の続きをやりたいと考えていました。結局、そのときの企画は流れてしまったんですが、わりと最近は『宇宙刑事ギャバン』の漫画をやったり、往年の『怪獣画報』を復刻したりと、秋田書店でも特撮ネタをやらせてもらえる機会が増えてきてまして、自分としても「今しかない!」とは思っていたんですよ。そんな折でしたね、瑳川先生から「バンダイさんからこういう話が来てるよ」というご連絡をいただいたのは。

瑳川:高橋さんには、定期的に食事に連れ出されたり、特に用もないのにそんな感じだったので、これはちゃんと伝えておかないと後々に恨まれてしまうな、と(笑)。

高橋:本当に急な話だったんですけど、それから三原さんともお会いして、こうして結実させることができました。

三原:かつての『激伝』って、ガシャポンが主幹事業部だったわけで、本当にすごいことだと思うんですね。これはもちろん、今の会社に入ってから気づいたことですけど、せっかく企画を動かせる立場になったので、この機会に『激伝』を復活させたいなと。

瑳川:つまり最低限の船団が組める主要なところで、激伝ファンが権力を持っていたという奇跡から始まった続編というわけです(笑)。

三原:ただ、紆余曲折はありました。最初に企画を出してから1年半くらい掛かりましたし。

高橋:それこそ5月くらいから急に動き出した感じでしたよね。

―今年の? つい最近のことじゃないですか!

高橋:お互いに企画書を作って意見を交換したり、お話をうかがったりしつつ、それぞれの立場でどういったことができるか会社に持ち帰ってたりしたんですが、それが急遽実現することに。

瑳川:企画そのものを練ることに時間が掛かったというよりは、単純にGOサインを出るのを待っていたというほうが正確かもしれませんね。『ウルトラマンギンガ』とか『大怪獣ラッシュ』とか、いろいろと新作の企画も動いていた時期でしたから。で、いざ決まってからは、一気に猛スピードでやってみようという話になりました。

―当時、エンペラ星人の軍勢との戦いの最中に漫画連載が終了してしまったじゃないですか。ガシャポンのほうも、ティガやゼアスの活躍を描く新章が始まったところで終わってしまった。今回、これらの戦いの続きを描く、あるいは完全にリブートをかけるという発想はなかったんでしょうか。

瑳川:そこは迷ったところではあったんですけど、あの頃のテンションを維持しながらエンペラ星人編の続きをやろうとすると、結構なボリュームが必要になってくるので、そうなると完結まで持っていける可能性が低いんじゃないかと思ったんです。それならば、あの世界観を引き継ぎつつ、新たな主人公で新しい物語を始めたほうがいい。今回、メビウスが主人公になってますけど、ウルトラマンが聖衣を着て天下一武道会に出るという出だしは、最初の『激伝』と一緒なんですね。敢えて何事もなかったかのように新シリーズを始めたほうが、新しいユーザーにも読みやすいんじゃないの? という。

―メビウスを主人公にするというのは、どなたのアイデアだったんでしょうか?

三原:それは僕のほうからお願いしました。『ウルトラマンメビウス』は、個人的にもウルトラシリーズの続編として好きでしたし、ウルトラファンからも主役として一番受け入れてもらえるウルトラマンなんじゃないかな、と。ゼロも魅力的なんですけど、彼は見た目からゴテゴテしているので、主人公にするにはキャラが強すぎるような気がしたんですよね。

―なるほど。メフィラス大魔王の弟子だったタロウの、そのまた弟子という関係性も美しいですよね。

瑳川:都合のいいことに、メビウス本編でもタロウの弟子だったので「こりゃいいわい」と(笑)。

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